2021年は7体のベアちゃんを全国の皆様にお迎え頂き誠にありがとうございました。
八月から国内外のコンテスト出展作品に集中させていただく期間をいただきまして
Sugar Pumpkinsではじめての挑戦となるアニマル作品。
狐の作品に着手致しました。
アニマル作品はテディベアとはまた違う技術が必要となり、型紙の制作、試作ドール作りから本番に挑み、
何度も作り直して試行錯誤の末に完成を迎えた記念すべき第一作目のアニマルドールです。
この度は有難いことに
第29回テディベア with Friends コンベンション内イベントのアニマルコンテストにて
日本テディベア協会賞を受賞 させて頂きました。
これまでの間、支えてくださったすべての皆様と私を評価してくださった日本テディベア協会の皆様。
当日のイベントを成功に導いてくださった関係者の皆様、本当にたくさんの方に感謝をしております。
半年間の非公開期間を経て、ここに作品をお披露目いたします。
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コンテスト出展作品タイトル
Tumbl Leaf -アーカンソーの狐- 制作コンセプト
Tumbl Leaf (タンブルリーフ) 海外の子供番組、タンブルリーフに出てくるやんちゃで好奇心旺盛な男の子、狐のフィグがモチーフです。フィグは綺麗なもの。不思議なもの。世界のあらゆるものに興味を持ちます。
息子たちと番組を見ている時に『アニマルを作るなら、こんな狐が作ってみたい。』そう思ったのがきっかけです。
(クレイアニメーションなので可愛くディフォルメされた青い狐です。)
そこからさまざまな狐の資料や動画を探しているうちに、アメリカ アーカンソー州に住む狐の動画を見つけました。
アメリカ アーカンソー州では狐をペットとして飼育することが出来ますが、私の見つけた動画では飼い主様が狐の子、(ロンロン)のために自然な林や森に限りなく近い、自由な飼育スペースを用意してあげていました。
林の中で風の様に自由に走り回り、茂みで飛び跳ねる狐のロンロン。そして時折飼い主様のもとに駆け寄り甘えて見せるのです。
愛しているからこそ自由な距離感で見守る飼い主様と、大好きだから自分から人間に駆け寄るロンロンの姿にとても温かい気持ちになりました。こんなやんちゃで可愛い自由な狐が作りたい!
ですが、仕上がりを迎えていくうちに色々と去来した想いは
“私の作品にしかできない動物表現とは何か。なぜ、縫いぐるみとしてのアニマルを作るのか”
ということでした。
テディベアとは違った側面を出したくて、どうしてもリアルな表現に走りがちですが、私は剥製の様な再現性を求めているのではなく、様々な理由で可愛い狐との(愛しいけれど一緒にいられないなにか)叶えられない想いを叶えられるのがドールの魅力ではないのだろうか。このコロナ禍でたくさんの人が共感した一緒にいたかった想い。
作品を手掛けるうえでより本物に近い様な忠実性だけを求めるのではなく、
そこにある愛情や息遣い。愛のある眼差しが私の作品にとって一番リアルに作りたいもの。必要なものではないのかと考え始めたのです。
(狐のロンロンは8年の生涯を終えて虹の橋を渡りました。)
完成した狐ちゃんは、大好きな飼い主様を待ちわびているワクワクとした喜びと愛の気持ちに溢れた優しい子に仕上がりました。
この子とはたくさんの泣き笑いを共にして、私にも色々な経験を与えてくれました。
Tumbl Leaf の言葉は転がる葉っぱ、回転する、ひっくり返る動き回る。そんな予想できない動きの子どもがはしゃぐ様なイメージを感じます。
例えば小さなつむじ風に舞う葉を見つけたら、この狐ちゃんが遊んでいる姿が目に浮かぶ様な。
そこにいない誰かを大切に想う気持ちを思い起こさせる子を作りたい。
人生は一瞬です。 可愛らしい時間も少しだけ。 けれど、ふとしたきっかけで思い出す柔らかい時間の流れをそのまま切り取り、形として生み出していきたい。
愛しさや可愛らしさと表裏一体にある切なさを。胸がぎゅっとなる瞬間を表現したいと考えています。
第29回日本テディベアwith Friendsコンベンション
2021アニマルコンテスト カテゴリーF部門(服を着ていない15cm以上アニマル)にて 日本テディベア協会賞を受賞したアニマルドール作品。
Sugar Pumpkins第一作目のアニマル作品です。
ふわふわのほっぺと胸、お腹の柔らかなラインが自慢の愛嬌たっぷりの狐の子。
作品に対する想いとコンセプトを大事に、この子の表情や仕草に活かしたいと想い、無垢な心で人間に近寄るような。
そんな優しいお顔の狐さんに仕上げました。
肉球やお爪、キラキラしたグラスアイとつやつやのお鼻など、モヘアのふわふわした身体のアクセントになるように。
宝石の様な輝きのある細部への作りにもこだわりました。同時に爪や髭などの繊細な部分はお迎え頂く子たちのことも想定して耐久性の高い頑丈な作りを目指しています。
(お髭はブラックバスの釣り糸を細く加工しています!千切れません!安心でしょう?)
モヘアの毛並みは白い胸毛部分だけでも三種類の白モヘアを使用しております。
これからのアニマル制作に活かせるようにたくさんの学びと課題を与えてくれた思い出深い作品です。
初めて作ったアニマル作品は、個人的にはまだまだ未熟さを痛感しております。ですが、たくさんの方に選ばれ愛され 日本テディベア協会の皆様にも評価をして頂けました。
大きな喜びを胸に。
今以上にお楽しみいただける作品作りを心がけていきたいと思います。
制作動機、そして心の中の想いをひとしきりお伝えしてしまいましたが、こちらでは技術的な表現手法をお話ししたいと思います。
テディベアとはまた違う心持ちで制作した狐です。まず狐の方が顔立ちとして目元の入り込みなどもキツく、お目目、口元、鼻のライン、耳回りと制作していて楽しい箇所が多くありました。目元、目頭の入り込みを強くして堀の深い子に仕上げていきます。口元の繊細なカーブも大事に作りました。縫いぐるみとしての可愛らしさのディフォルメで最後まで迷い続けて今後も課題となったのが腕、足の表現です。本来もっと長く細いはずの手足を縫いぐるみ的に短く表現し、お腹あたりでちょこんとした腕。肉球の作りこみの関係でちょっと腕足が太くなってしまったところが頂けない。このあたりもっと研究していきたいと思いますw
モヘアの色の切り替わり箇所は様々工夫を凝らし、作り直し箇所がたくさんありました。腕も足も縫い直し、胸元からお腹の白のモヘア部分は三種類の長さ、密度、毛並みの違うモヘアを使い分けています。首から胸元はたっぷりした毛並みを理想とし、お腹と股回りは薄目の毛並み。
お顔回りホッペやわき腹の白切り替わり箇所、そしてこの子は首パーツを作り、胸や首もとのラインをちょっと工夫してみました。
縫いぐるみは綿が柔らかく入っているのが理想ですが、首が不規則に埋没する感じや顔、手足先などが変形するのは嫌なのですwそんな個所は固めに綿を詰めています。
全体にあまり太ましくなく、細身の子が好きになりがちなので(原型師あるある。たぶんポーズ付け身体のひねり好みあるある。)これも気を付けて制作しなければならないところ。他ジャンルから来た所以たるやですね。
尻尾のみダブルジョイントとなっています。それ以外はノーマルジョイントです。
髭の素材はブラックバスの釣り糸を細く削り使用しています。羊毛などで使われる猫髭なども試しましたが、製品としての耐久性を考えると絶対千切れない髭の強度が欲しかったのでこの髭の頑丈さはお墨付きです。
耳中はちょっと皺を見せる皮膚感ぽい生地です。腕、足の生地は少し伸縮性のある生地なので綿を詰めてから作りこんでいきました。
ですが少し強度が弱いので表現手法に課題あり。
今回、爪の色味が綺麗に出来ました。エメラルドの様なグリーンが見えたりと艶々感が良い感じに仕上がり、お顔のメイクも少し濃いめ。
コンテストのために大きめな作りになっているため、これからもう少し小さな作りにして改めて制作したいなと考えています。